indigo la Endの「名前は片想い」は、
報われない恋の苦しさと、それでも相手を思いやる強さを描いた、美しくも切ないラブソングです。
この曲の語り手は、自分の想いが一方通行であることを受け入れながらも、
“片想い”というラベルをただ貼るだけでは終わらせない、感情の矛盾と揺らぎを抱えています。
この記事では、そんな「名前は片想い」の歌詞を丁寧に読み解き、
“好きだからこそ身を引く”という、苦しく優しい恋のかたちを紐解いていきます。
💘 1. 始まりに恋して、“途中”を飛ばしてしまった
一目惚れだったよ
だから怖かったな
始まりに恋して途中を飛ばしたの
恋の「最初」に気持ちが走りすぎて、
関係をじっくり築く“途中”をすっ飛ばしてしまった主人公。
そのせいで、本当の関係性が築けなかった後悔と怖さがにじみます。
「好き」の強さが、逆に相手との距離を測り損ねる不器用さが、ここで示されています。
🎨 2. 混ざれなかった二人、ただ色が同じだっただけ
あなたと私混ざれないのかな
偶然色が同じなだけ
たったそれだけでバツが悪いの
知っちゃった
「色が同じ」という表現は、一見似ているけど、本質は違う二人を表しています。
その“偶然の共通点”に期待してしまったが、結局は“混ざれなかった”=ひとつにはなれなかった。
この瞬間、主人公は共鳴とすれ違いの境界線を自覚するのです。
🔖 3. 「曖昧な関係の名前は片想い」──それでも、縛ってしまう
曖昧な関係の名前は片想い
賢くなった私って誰
そうやって縛った いつも通りのこと
ここでは、「賢くなった私」という表現が、恋に臆病になった自分を指しています。
- “片想い”と名前をつけて、関係を処理する
- 自分にとって都合の良い言葉で、感情を押さえ込む
でもその“賢さ”は、本当の自分を縛る枷にもなってしまうのです。
🫧 4. 「私らしく生きる」より「あなたらしく生きてほしい」
私らしく生きるより
あなたらしく生きて欲しいから
バイバイ
一方的な想いに終止符を打つ決断。
でもそこにあるのは自己犠牲の優しさであり、
「あなたが幸せなら、それでいい」と自分を納得させようとしています。
けれどその「強さ」は、
本当は自分が壊れてしまいそうなほど苦しいことなのです。
🎭 5. 明るく歌う“悲しみ”と、“わかってほしい/ほしくない”の間
いつも悲しいけど 明るく歌ったよ
わかって欲しいけど わかって欲しくもない
この矛盾こそが、片想いの本質かもしれません。
本音を知ってほしいけど、それが重荷になるのは嫌。
言いたいけど、言ったら終わる気がする。
だから、明るく歌う“強がり”が感情のバランスを保っているのです。
🕊️ 6. 「問題ない関係」に悩む私と、正しさに刺される私
問題ない関係で悩んだりしないから
賢くなったつもりにならないで
正しさの矛 たまに痛いよ
ここでは、恋愛の“正解”や“普通”に自分を当てはめようとした痛みが表れます。
- 「問題ない関係」なのに苦しい
- 「片想い」と名付けたのに、まだ想ってしまう
そんな自分を“おかしい”と責めてしまうのは、
**社会や他人が押し付ける“正しさ”**のせいかもしれません。
🪞 7. 強がり、崩れ落ちる理性、正直な身体
強がってしまったの
本当は崩れ落ちそうで
飛んでった理性を取り戻したいのに
身体はやけに正直
ラストに向けて感情は決壊寸前。
どれだけ言葉で取り繕っても、
身体(感情)は正直で、まだあなたを求めてしまう。
理性を取り戻そうとしても、想いが止まらない。
そんな恋の終わりに抗う最後の断片がここに詰まっています。
🎤 8. 「私らしく片想いに乗せて歌った」=未練と自己表現の交差点
私らしく片想いに乗せて歌った
このラストラインは、全ての矛盾を抱きしめて歌った主人公の自己肯定。
- “私らしく”=不器用で、でも誰かを思いやれる自分
- “片想いに乗せて歌う”=それすらも、表現に昇華する力
片想いは終わらない。けれど、それでも「歌う」ことができた。
それが、せめてもの救いなのかもしれません。
💡 まとめ|「名前は片想い」は、“好き”の終わりを美しく、痛く描いた静かな名作
indigo la Endの「名前は片想い」は、
恋が報われなかったことそのものより、
**「自分を抑えてしまったことの痛み」**を描いたラブソングです。
- 好きだから言えなかった
- 優しさで縛ってしまった
- 正しさに従おうとして、心が置き去りになった
そんな恋の“あるある”が、
言葉のすき間と比喩の美しさの中に繊細に埋め込まれています。
きっとあなたも、この曲の中に“名前のつかない片想い”を見つけるはずです。
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