indigo la Endの「チューリップ」は、
誰かに置いていかれた“私”の視点から綴られる別れの歌です。
この曲の中では、恋の終わりがドラマチックにではなく、静かで冷たい“変化”として描かれていきます。
その中で、花の名前である「チューリップ」は、かつてのあたたかさと今の冷たさのコントラストとして、象徴的に使われています。
この記事では、そんな「チューリップ」の歌詞を丁寧に解釈しながら、
“別れに名前をつけるような優しさ”が滲むこの楽曲の本質に迫ります。
🎨 1. 「染まりきった私」と「色を変えたあなた」
染まりきった私
今更変えられない色
物語った私
あとがきへの助走ルート
色を変えたあなた
壊れきった私を見て
差し出そうとした手を
引っ込めた
冒頭と後半に登場するこの対比こそ、曲の軸となるモチーフ。
“私”は恋によって完全に染まってしまった存在。
でも“あなた”は変わってしまった。
この色の違いが、2人の決定的なすれ違いを象徴しています。
そして、「引っ込めた手」は、もう救えないと分かっている“私”への**最後の優しさ(と残酷さ)**の描写にも感じられます。
🖋 2. 「あとがきへの助走」=恋の終わりを予感していた私
散文的な変わり目
あとがきへの助走ルート
ここでは、恋が終わる流れがまるで小説のラストシーンのように静かに進んでいくさまが描かれています。
- 「散文的」=劇的ではなく、日常の延長で起きた終わり
- 「助走ルート」=すでに終わりに向けて走っていた私
それでも、「それだけでもう終わりなの?」と問いかける主人公に残るのは、未練と希望の混ざった矛盾した感情です。
❄️ 3. 「さよならがもうどうにもならないなら」
さよならが
もうどうにもならないなら
せめて私を寒くなさって
あなたが切った夜は
少し大きすぎた
ここで語られる「夜」は、恋が終わった瞬間の象徴。
“さよなら”がもう変えられないなら、せめてあたたかく終わらせてほしかった。
でも現実は、感情が追いつかないほど急で冷たい終わり方だった。
その“夜”の大きさに、主人公はずっと凍えているのです。
💭 4. “賢くなった私”と“戻れない口”
終われないって私がいくら喚いたとて
あなたは首を横に振る
冷たくなった光
やけに青白くて
過去にならなきゃ2番目でも構わないって
口を開こうとしたけど
閉じてしまったものは
もう戻らなくて
ここでは、主人公の“諦めきれなさ”が強く表現されています。
「2番目でもいい」とまで言おうとして、言えなかった自分。
そして、その言えなかった言葉が、もう戻らないという喪失感。
「賢くなった私」とは、感情を抑えすぎて何も言えなくなってしまった私の姿でもあります。
🌷 5. チューリップの香りに滲む余韻
2つに割れた夜に
移ろうチューリップの香り
夢を満たして涙を誘うよ
チューリップは、春を告げる花・恋の象徴。
それが“移ろう香り”として描かれていることで、
かつての幸せも、今では涙を誘うだけのものになったことがわかります。
夜が“2つに割れる”という表現も印象的で、
ひとつだったはずの時間が、“あなた”と“私”で完全に別れてしまったことを暗示しています。
🧣 6. 「寒くなさって」という祈り、そして「雪に混じり合った私」
赤かった2人は今日で終わって
雪に混じり合った
あなたの望む色になった
ああ、寒いな
- 「赤かった2人」=かつて燃えていた愛
- 「雪に混じった」=冷たさに溶けて、自分の色すら失った私
ラストにかけて、主人公は“あなたの望む色”になるために、
自分の色(想い)を犠牲にしたことを受け入れていきます。
それは強さではなく、苦しみながらの順応と諦め。
「寒いな」の一言には、愛を失った身体が凍えるような痛みが込められています。
🎼 まとめ|「チューリップ」は、置いていかれた“私”が綴る静かな別れの花束
indigo la Endの「チューリップ」は、
ドラマチックな別れの歌ではなく、“温度の変化”を描いた別れの物語です。
- 染まってしまった私と、変わっていくあなた
- 言えなかった言葉と、引っ込められた手
- 赤から白へと変化する、チューリップの色のような愛
これらが折り重なり、
美しくて、もう戻らない過去に静かに祈るような曲に仕上がっています。
恋の終わりに“名前”をつけるなら、
この曲こそが、その名札になるのかもしれません。
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