Creepy Nutsの「LEGION」は、単なる自己主張の曲ではありません。「自分一人がまるで軍団(レギオン)」という比喩を通じて、現代のアイデンティティの複雑さ、多面性、そして孤独な闘いの強さを描いた、極めてパーソナルかつ普遍的なアンセムです。
🧠「俺自体が●●」で拡張される一人の存在
俺自体がCREW 俺自体がSQUAD
俺自体がMOB 俺自体がGROUP
冒頭から畳みかける「俺自体が〜」という言葉のラッシュ。まるで一人でチームを成すような存在であると高らかに宣言しています。これは「多重人格」や「分裂」ではなく、“自分の中に複数の視点や力が宿っている”という意味での自己拡張。
俺自体がFAMILYであってTEAM
俺自体がCYPHER We like the Wu
ヒップホップの象徴「Wu-Tang Clan」になぞらえたこのラインでは、「自分が“サイファー(ラップの輪)”そのものだ」とする強烈な自負を込めています。
👁 「我が名はレギオン」──聖書からの引用
我が名はレギオン yeah
“Legion”は新約聖書に登場する言葉。悪霊に取り憑かれた男が「我が名はレギオン。我々は大勢だから」と語る場面から来ています。Creepy Nutsはこの言葉を、自分の中に多くの視点・感情・記憶が共存していることの象徴として用いています。
📱 現代の分裂と対比する自我の一貫性
アカウントだけぎょーさん持つお前と
一緒にすな 人間や思うなよ
SNSで人格を使い分ける現代人への皮肉と、自分は「多面性を持ちつつも“本体”として存在している」ことの違いを強調しています。
共存する盾と矛
首脳会議今インサイドヘッド
この行では、内面で意見が衝突しながらも、それを一人で処理し乗り越える姿を描写。映画『インサイド・ヘッド』のように、心の中の登場人物たちが“会議”をしているような感覚です。
🧬「全員分の思い背負った一人っ子」という覚悟
全員分の思い背負った一人っ子
このフレーズに、この曲の核心があります。多くの視点、感情、仲間、歴史を背負ってなお「一人で立つ」という決意。その圧力と覚悟こそが、“一人レギオン”という表現の重みを裏付けています。
📝 まとめ|「レギオン」であるということは、孤独で最強なこと
「LEGION」は、Creepy Nuts自身のパーソナルな物語であると同時に、現代の若者たちが感じる多様性・孤独・責任感を象徴する楽曲でもあります。
自分の中に仲間も矛盾も含めて抱えている。
一人であるけど、大勢である。
その“矛盾した強さ”を、ユーモアと鋭さで包み込んだこの曲は、まさに現代のアイデンティティ讃歌といえるでしょう。
🔖 引用
本記事はCreepy Nuts「LEGION」(Sony Music Labels, 2024年)の歌詞をもとに構成した非公式の解釈記事です。
歌詞・音源の著作権はアーティストおよび関係各社に帰属します。
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