Creepy Nuts「土産話」は、R-指定とDJ松永がこれまで歩いてきた“すべての道のり”を、一曲に丸ごと収めたセルフドキュメンタリー・ラップです。
武勇伝ではない。美化された成功譚でもない。 泥をかぶった日も、笑うしかなかった日も、 夜行バスで凍えた身体も、客がほとんどいなかったライブも。
そうした過去の出来事がすべて「イカれた土産話」として輝き出す── そんなCreepy Nutsにしか描けない人生の物語が、この曲には詰まっています。
本記事では、歌詞を場面ごとに区切りながら、 当時の空気・時代背景・セルフオマージュ・伏線まで徹底的に読み解きます。
- 🕹 1. 新大久保の夜──“結成の瞬間”ではなく、“あの頃の空気”の象徴
- 🍕 2. 上板橋ワンルームとドミノピザ──現実は地味で、夢だけが派手だった夜
- 🎧 3.「シラフで酔狂」──過去曲のセルフ引用であり、哲学の核心
- 🚌 4. 夜行バス──売れない頃の“深夜高速”が、今のステージにつながっている
- 🛒 5. ガラガラのライブとショッピングモール──「人がいない現場」も全部宝物
- ⚔ 6. フリースタイルダンジョン──“沈む覚悟”で挑んだ戦場
- 🤝 7. 「たりない所」──“たりないふたり”との共鳴
- 🏃 8. “味わう間も、噛み締める間もない”成功のスピード
- 🎭 9. 助演じゃない──“助演男優賞”セルフオマージュの逆転劇
- 🏟 10. リキッド、Zepp、新木場──“主役”として会場を埋める快感
- 🧱 11.「飛び級のライバル横目にコツコツ」──SNS時代へのアンチテーゼ
- 🎤 12. フェスのスタッフだった日から、“トリ前”へ──物語が完成する瞬間
- 🎇 13. 「年末空けとくわ」──紅白歌合戦への伏線が現実になる
- 🏁 14. まとめ──“書くことがねぇ人生”なんて、ひとつもない
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- 📝 引用について
🕹 1. 新大久保の夜──“結成の瞬間”ではなく、“あの頃の空気”の象徴
「大事になったな」
「わりと大事になったな」
曲は、成功した“今”から始まります。 軽口のように聞こえるけれど、このやり取りには10年以上の時間と信頼がにじんでいます。
「新大久保だったか?」「ゲーセンの前で真夜中」
この描写は、あくまで象徴的な一コマです。
実際の結成は、R-指定とDJ松永がHIPHOPイベントで自然と仲良くなり、“なんとなく”組む流れになったというもの。 インタビューでも二人はそう語っています。
だからこそ、この“新大久保の夜”は、 ・誰にも知られなかった時代 ・イベント帰りの深夜 ・ただ音楽の話をして歩いた時間 その“空気”を象徴するシーンなのです。
「忘れた」「結成秘話はシケてる」
ドラマチックな運命の出会いはない。 ただHIPHOPのイベントで、好きな音楽の話をし、気づけば隣にいるようになっていた。
この「何も起きていない感じ」こそCreepy Nutsの出自であり、 二人が今でも“普通のまま”いられる理由でもあるのです。
🍕 2. 上板橋ワンルームとドミノピザ──現実は地味で、夢だけが派手だった夜
「上板のワンルーム」「ガキ使」「ドミノピザ」
ここはファンにとって名場面。 大晦日、狭いワンルームで、ガキ使を見ながらドミノピザを食べる。
むしろ普通すぎる光景ですが、その奥には 「武道館」 「もしも話」 という巨大な夢が並走していた。
「ライムスター武道館DVDを観ながら話してた“もしも”」
DVD越しの武道館は遥か彼方。 しかしあの夜ふたりが語った“もしも”は、 わずか数年後に本当に実現していきます。
にもかかわらず、当のR-指定はこう言います。
「まだ実家感覚が抜けない」
成功しても心が追いつかない。 売れても“気持ちは地続き”のまま。
Creepy Nutsらしい、成功の描き方です。
🎧 3.「シラフで酔狂」──過去曲のセルフ引用であり、哲学の核心
「地で行ってたシラフで酔狂」
このラインは、ファンなら絶対に反応する場面。
なぜならこれは過去曲『シラフで酔狂』のセルフオマージュだからです。
R-指定が素面のまま、夢に酔っていた時期を象徴するワードであり、 路上時代から一貫して持ち続けていた“狂気にも似た本気”を言葉にしたもの。
- 金がない
- 売れない
- 将来は見えない
そんな時にでも、ハマヤんの家でチルして、 テラさん家の録音ブースでラップして、 「ジリ貧でも笑っていた」
この曲のこのパートは、 “下積み=苦労”という単純な構図ではなく、 「夢に本気で遊んでいた日々」として描いています。
ここにCreepy Nutsというユニットの根っこがある。
🚌 4. 夜行バス──売れない頃の“深夜高速”が、今のステージにつながっている
「夜行バス」「深夜高速」
このパートは、地方へ向かう夜行バスのシーン。 MCバトルや小さなライブに出演するため、何度も乗った深夜高速。
そして今、その景色がステージへの一本道だったと気づく。
当時はわからなかった。 でも振り返れば、あの夜行バスの揺れも、 寒いサービスエリアの空気も全部、 今のライブにつながっている。
この気づきこそが、“土産話”の核心にある感覚です。
🛒 5. ガラガラのライブとショッピングモール──「人がいない現場」も全部宝物
「ガラガラのワンマン」「パルコ前ミカン箱」
客がほとんどいなかったワンマン。 ミカン箱の上でラップしたパルコ前。
止まってくれない通行人の横で必死に声を出していた日々。
でも今なら笑える。
「イカれた土産話が溢れ出る山のように」
この一行がタイトルの意味そのもの。
当時は笑えなかった出来事も、 数年後には“語りたい記憶”になる。
人生の価値は後からわかる。
Creepy Nutsのこの視点が、 数ある自伝ラップの中でも群を抜いて温かく、深い理由です。
⚔ 6. フリースタイルダンジョン──“沈む覚悟”で挑んだ戦場
「沈む覚悟で乗り込んだフリースタイルダンジョン」
ここから、一気に“物語の転換点”へ。 Creepy Nutsのキャリアを語るうえで、フリースタイルダンジョンは避けて通れません。
R-指定はラッパーとして、既にUMB三連覇という歴史的快挙を成し遂げていたものの、 テレビという巨大なフィールドは別次元。
勝てば国民的認知を得る可能性がある一方、 負ければ“叩かれる”“実力不足と言われる”。 文字通りアーティスト生命をかけた舞台。
だからこそ、この一節の“沈む覚悟”という言葉が異常に重い。
失敗も晒される場にあえて飛び込み、 勝利を掴みとった経験が、Creepy Nutsの軌跡を大きく変えていきます。
🤝 7. 「たりない所」──“たりないふたり”との共鳴
「例のふたりとダブらしたたりない所」
この“例のふたり”とは、 R-指定が常々リスペクトを語る山里亮太 × 若林正恭の「たりないふたり」のこと。
「たりないふたり」は、 ・実力はある ・でも報われない ・どこか“足りない” そんな二人の腐れ縁を描いた作品で、 “完璧じゃない者の逆襲”というテーマがCreepy Nutsと驚くほど一致している。
R-指定&DJ松永も、 テレビや音楽業界で“たりなさ”を抱えたところからスタートした。 それを正面からユーモアに変えて成り上がった点が重なるのです。
「足りなかったところが物語を生む」 これは彼らの人生観そのもの。
🏃 8. “味わう間も、噛み締める間もない”成功のスピード
「味しめる間も、噛み締める間も無いスピードの日々」
フリースタイルダンジョン出演をきっかけに、 Creepy Nutsは急速に注目を浴びていきます。
テレビ出演、ラジオ出演、ライブ増加、 そして“クリーピーナッツ”という名前が世間に広がっていく。
しかし彼らは、そのスピードに酔いしれたり慢心したりしない。 むしろ「忙しすぎて喜ぶ暇すらない」という現実が描かれている。
成功した人間の多くが懐古する 「もっと味わっておけばよかった」という後悔。
Creepy Nutsはそれすらも笑い飛ばし、 「そんな余裕なかったけど、それも土産話やな」 という心境まで昇華している。
🎭 9. 助演じゃない──“助演男優賞”セルフオマージュの逆転劇
「今じゃ誰も思わねえ俺達を助演と」
ここが「土産話」の中でも特に重要なライン。 なぜならこれは、自分たちの過去曲「助演男優賞」へのセルフオマージュだから。
「助演男優賞」は、 ・主役じゃなくても輝ける ・六番手でもいい、見せ場を決める ・“脇役人生”を誇りに変える というテーマを持った曲。
当時のCreepy Nutsは、 バトル界では有名でも、テレビやヒットチャートでは“助演”のような扱いだった。
しかし「土産話」で語られるのは、 その“助演精神”のまま、ついに主役としてライブハウスを埋める存在になったという文脈。
「バトルじゃなくワンマンで埋めたリキッド」
バトルの勝敗ではなく、 “自分たちの名前だけで人を集める”という本当の意味での成功。
助演男優賞で語った価値観を“否定して主役になった”のではなく、 助演の美学を保ったまま主役級の成果を出したという、誰にも真似できない逆転劇。
彼らのキャリアが一本の線につながる瞬間だ。
🏟 10. リキッド、Zepp、新木場──“主役”として会場を埋める快感
「Zepp Tokyo」「新木場コースト」
Creepy Nutsにとって、ライブハウスはただの“仕事場”ではない。 路上やクラブで敗北を味わった日も、 観客ゼロに近いワンマンを経験した日も、 すべてライブの現場から始まった。
だからこそ、 Zeppや新木場を“自分たちのワンマンで”埋めたという事実は、 他のアーティスト以上に意味が重い。
ステージの端から端までファンで埋まっている光景は、 「土産話」の歌詞に出てくるどのシーンよりも華やかで、 最も胸を締めつける瞬間と言える。
それは単なる成功ではない。
「助演」と呼ばれていた二人が、自分たちの手で自分たちの物語の主役になった瞬間。
🧱 11.「飛び級のライバル横目にコツコツ」──SNS時代へのアンチテーゼ
「飛び級のライバル横目にコツコツ」
このラインは、Creepy Nutsのキャリア観を象徴している。
SNSやTikTokから一気にスターダムに駆け上がるアーティストが増えた時代。 そんな“飛び級の成功者”たちを横目に、Creepy Nutsは地道に積み上げてきた。
- クラブでの場数
- ワンマンライブ
- 全国サーキット
- ラジオのレギュラー
- MCバトルの実績
それらすべてが、 “一夜で手に入れた人気”ではなく“積み上げた信頼”としてリスナーに返ってきた。
Creepy Nutsというユニットは、 このコツコツという言葉が似合いすぎる。
だからこそ、全ての努力が“土産話”として花開いていくのです。
🎤 12. フェスのスタッフだった日から、“トリ前”へ──物語が完成する瞬間
「お前が誘導のバイトしてたフェス 俺ら今トリ前でかましてる」
この一行は、泣かずに読めないレベルのエモさ。
かつてDJ松永が“誘導スタッフ”として働いていたフェス。 道案内をして、スタッフTシャツを着て、 出演者を見送りながら「いつか出たい」と思っていた場所。
その同じフェスの、その同じステージで、 今はトリ前というトップクラスの出番を任されている。
「土産話」という曲のテーマを最も象徴するシーンです。
人生はこんなにも出来すぎた物語を描くことがある。
そしてこの後、物語はクライマックスへ向かいます。
🎇 13. 「年末空けとくわ」──紅白歌合戦への伏線が現実になる
「ガキ使にピザ? カウントダウン紅白? まぁ今年も年末空けとくわ…」
このラスト前の一節は、「土産話」の中でも最も鳥肌が立つパートです。 一聴すると、いつものR-指定の軽口に聞こえます。
しかし実際には、ここにはとんでもなく深い意味が隠されている。
✔ 「年末空けとくわ」= 紅白のために予定を空けておく
ラストバースにも示唆されているように、これは「紅白歌合戦に出る可能性を考えて予定を空けておく」という意味です。
Creepy Nutsの二人は、まだ紅白出演が現実的ではなかった頃から、 「冗談・皮肉・夢」の中間のようなテンションで、 “もしも紅白に呼ばれたら年末のスケジュールが必要やから” というニュアンスで語ってきました。
つまりここは、“半分ネタ/半分本気”の夢語りなのです。
✔ そして 2024年──本当に紅白歌合戦に出場した
「土産話」がリリースされた時点では、紅白出演は決まっていなかった。 しかし2024年末、Creepy NutsはついにNHK紅白歌合戦への初出場を果たします。
かつて大晦日にワンルームでガキ使を観ながらピザを食べていた二人が、 今度は国民的番組のステージに立つ。
この現実が起きた瞬間、 ファンの中ではこの歌詞が一気に“伏線の回収”として語られました。
あの日の夢語りが、未来へのメッセージだったと証明されたのです。
「年末空けとくわ」は、ただの口癖なんかじゃなかった。
本当に、紅白に出るための“予告ラップ”になってしまった。
Creepy Nutsというユニットの人生には、本当に物語性がある。 そう実感させてくれるのが、このパートです。
🏁 14. まとめ──“書くことがねぇ人生”なんて、ひとつもない
「書くことがねぇ」嘆いてた人生 振り返るだけで歌になってる
曲の最後に置かれたこの一行は、「土産話」の核心です。
売れない頃の自分は、 「人生に書くほどの価値なんてない」 「ストーリーになんてならない」 と思っていた。
でも実際にはどうでしょうか?
- 深夜のイベントで自然と相方になった時間
- 上板橋ワンルームでの“もしも話”
- ガラガラだったワンマンライブ
- ショッピングモールでの即興ラップ
- 夜行バスから眺めた深夜高速
- スタッフとして働いていたフェスのステージに立った日
- ダンジョンで歯車が回り始めた瞬間
- 助演男優賞の精神を持ったまま主役になったライブ
- そして、紅白歌合戦への初出場
そのどれもが、今は“語らずにはいられない土産話”になっている。
Creepy Nutsがこの曲で伝えるのは、 「続けてさえいれば、人生は必ず物語になる」 というシンプルで力強い真理です。
成功かどうかではない。 派手な瞬間があるかどうかではない。
泥臭さも、恥ずかしさも、失敗も、 全部あとから振り返れば“歌になる”。
だからこそこの曲は、 夢追い人のための応援歌でもあり、 全ての生活者の人生賛歌でもある。
聴くたびに、 「自分の人生にも土産話はある」と思わせてくれる。
そんな、Creepy Nutsの核を成すような名曲です。
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📝 引用について
本記事は Creepy Nuts『土産話』(Sony Music Labels)の歌詞を参考に構成されています。
歌詞・音源の著作権はアーティストおよび関係各社に帰属します。

