【歌詞解説】Creepy Nuts「土産話」|下積みと夢のすべてを語る、自伝的ラップソング

Creepy Nuts「土産話」|下積みから紅白出場までの歩みを描いた自伝的ラップソング 歌詞紹介

Creepy Nuts「土産話」は、R-指定とDJ松永がこれまで歩いてきた“すべての道のり”を、一曲に丸ごと収めたセルフドキュメンタリー・ラップです。

武勇伝ではない。美化された成功譚でもない。 泥をかぶった日も、笑うしかなかった日も、 夜行バスで凍えた身体も、客がほとんどいなかったライブも。

そうした過去の出来事がすべて「イカれた土産話」として輝き出す── そんなCreepy Nutsにしか描けない人生の物語が、この曲には詰まっています。

本記事では、歌詞を場面ごとに区切りながら、 当時の空気・時代背景・セルフオマージュ・伏線まで徹底的に読み解きます。


🕹 1. 新大久保の夜──“結成の瞬間”ではなく、“あの頃の空気”の象徴

「大事になったな」
「わりと大事になったな」

曲は、成功した“今”から始まります。 軽口のように聞こえるけれど、このやり取りには10年以上の時間と信頼がにじんでいます。

「新大久保だったか?」「ゲーセンの前で真夜中」

この描写は、あくまで象徴的な一コマです。

実際の結成は、R-指定とDJ松永がHIPHOPイベントで自然と仲良くなり、“なんとなく”組む流れになったというもの。 インタビューでも二人はそう語っています。

だからこそ、この“新大久保の夜”は、 ・誰にも知られなかった時代 ・イベント帰りの深夜 ・ただ音楽の話をして歩いた時間 その“空気”を象徴するシーンなのです。

「忘れた」「結成秘話はシケてる」

ドラマチックな運命の出会いはない。 ただHIPHOPのイベントで、好きな音楽の話をし、気づけば隣にいるようになっていた。

この「何も起きていない感じ」こそCreepy Nutsの出自であり、 二人が今でも“普通のまま”いられる理由でもあるのです。


🍕 2. 上板橋ワンルームとドミノピザ──現実は地味で、夢だけが派手だった夜

「上板のワンルーム」「ガキ使」「ドミノピザ」

ここはファンにとって名場面。 大晦日、狭いワンルームで、ガキ使を見ながらドミノピザを食べる。

むしろ普通すぎる光景ですが、その奥には 「武道館」 「もしも話」 という巨大な夢が並走していた。

「ライムスター武道館DVDを観ながら話してた“もしも”」

DVD越しの武道館は遥か彼方。 しかしあの夜ふたりが語った“もしも”は、 わずか数年後に本当に実現していきます。

にもかかわらず、当のR-指定はこう言います。

「まだ実家感覚が抜けない」

成功しても心が追いつかない。 売れても“気持ちは地続き”のまま。

Creepy Nutsらしい、成功の描き方です。


🎧 3.「シラフで酔狂」──過去曲のセルフ引用であり、哲学の核心

「地で行ってたシラフで酔狂」

このラインは、ファンなら絶対に反応する場面。

なぜならこれは過去曲『シラフで酔狂』のセルフオマージュだからです。

R-指定が素面のまま、夢に酔っていた時期を象徴するワードであり、 路上時代から一貫して持ち続けていた“狂気にも似た本気”を言葉にしたもの。

  • 金がない
  • 売れない
  • 将来は見えない

そんな時にでも、ハマヤんの家でチルして、 テラさん家の録音ブースでラップして、 「ジリ貧でも笑っていた」

この曲のこのパートは、 “下積み=苦労”という単純な構図ではなく、 「夢に本気で遊んでいた日々」として描いています。

ここにCreepy Nutsというユニットの根っこがある。


🚌 4. 夜行バス──売れない頃の“深夜高速”が、今のステージにつながっている

「夜行バス」「深夜高速」

このパートは、地方へ向かう夜行バスのシーン。 MCバトルや小さなライブに出演するため、何度も乗った深夜高速。

そして今、その景色がステージへの一本道だったと気づく。

当時はわからなかった。 でも振り返れば、あの夜行バスの揺れも、 寒いサービスエリアの空気も全部、 今のライブにつながっている。

この気づきこそが、“土産話”の核心にある感覚です。


🛒 5. ガラガラのライブとショッピングモール──「人がいない現場」も全部宝物

「ガラガラのワンマン」「パルコ前ミカン箱」

客がほとんどいなかったワンマン。 ミカン箱の上でラップしたパルコ前。

止まってくれない通行人の横で必死に声を出していた日々。

でも今なら笑える。

「イカれた土産話が溢れ出る山のように」

この一行がタイトルの意味そのもの。

当時は笑えなかった出来事も、 数年後には“語りたい記憶”になる。

人生の価値は後からわかる。

Creepy Nutsのこの視点が、 数ある自伝ラップの中でも群を抜いて温かく、深い理由です。



⚔ 6. フリースタイルダンジョン──“沈む覚悟”で挑んだ戦場

「沈む覚悟で乗り込んだフリースタイルダンジョン」

ここから、一気に“物語の転換点”へ。 Creepy Nutsのキャリアを語るうえで、フリースタイルダンジョンは避けて通れません。

R-指定はラッパーとして、既にUMB三連覇という歴史的快挙を成し遂げていたものの、 テレビという巨大なフィールドは別次元。

勝てば国民的認知を得る可能性がある一方、 負ければ“叩かれる”“実力不足と言われる”。 文字通りアーティスト生命をかけた舞台。

だからこそ、この一節の“沈む覚悟”という言葉が異常に重い

失敗も晒される場にあえて飛び込み、 勝利を掴みとった経験が、Creepy Nutsの軌跡を大きく変えていきます。


🤝 7. 「たりない所」──“たりないふたり”との共鳴

「例のふたりとダブらしたたりない所」

この“例のふたり”とは、 R-指定が常々リスペクトを語る山里亮太 × 若林正恭の「たりないふたり」のこと。

「たりないふたり」は、 ・実力はある ・でも報われない ・どこか“足りない” そんな二人の腐れ縁を描いた作品で、 “完璧じゃない者の逆襲”というテーマがCreepy Nutsと驚くほど一致している。

R-指定&DJ松永も、 テレビや音楽業界で“たりなさ”を抱えたところからスタートした。 それを正面からユーモアに変えて成り上がった点が重なるのです。

「足りなかったところが物語を生む」 これは彼らの人生観そのもの。


🏃 8. “味わう間も、噛み締める間もない”成功のスピード

「味しめる間も、噛み締める間も無いスピードの日々」

フリースタイルダンジョン出演をきっかけに、 Creepy Nutsは急速に注目を浴びていきます。

テレビ出演、ラジオ出演、ライブ増加、 そして“クリーピーナッツ”という名前が世間に広がっていく。

しかし彼らは、そのスピードに酔いしれたり慢心したりしない。 むしろ「忙しすぎて喜ぶ暇すらない」という現実が描かれている。

成功した人間の多くが懐古する 「もっと味わっておけばよかった」という後悔。

Creepy Nutsはそれすらも笑い飛ばし、 「そんな余裕なかったけど、それも土産話やな」 という心境まで昇華している。


🎭 9. 助演じゃない──“助演男優賞”セルフオマージュの逆転劇

「今じゃ誰も思わねえ俺達を助演と」

ここが「土産話」の中でも特に重要なライン。 なぜならこれは、自分たちの過去曲「助演男優賞」へのセルフオマージュだから。

「助演男優賞」は、 ・主役じゃなくても輝ける ・六番手でもいい、見せ場を決める ・“脇役人生”を誇りに変える というテーマを持った曲。

当時のCreepy Nutsは、 バトル界では有名でも、テレビやヒットチャートでは“助演”のような扱いだった。

しかし「土産話」で語られるのは、 その“助演精神”のまま、ついに主役としてライブハウスを埋める存在になったという文脈。

「バトルじゃなくワンマンで埋めたリキッド」

バトルの勝敗ではなく、 “自分たちの名前だけで人を集める”という本当の意味での成功。

助演男優賞で語った価値観を“否定して主役になった”のではなく、 助演の美学を保ったまま主役級の成果を出したという、誰にも真似できない逆転劇。

彼らのキャリアが一本の線につながる瞬間だ。


🏟 10. リキッド、Zepp、新木場──“主役”として会場を埋める快感

「Zepp Tokyo」「新木場コースト」

Creepy Nutsにとって、ライブハウスはただの“仕事場”ではない。 路上やクラブで敗北を味わった日も、 観客ゼロに近いワンマンを経験した日も、 すべてライブの現場から始まった。

だからこそ、 Zeppや新木場を“自分たちのワンマンで”埋めたという事実は、 他のアーティスト以上に意味が重い。

ステージの端から端までファンで埋まっている光景は、 「土産話」の歌詞に出てくるどのシーンよりも華やかで、 最も胸を締めつける瞬間と言える。

それは単なる成功ではない。

「助演」と呼ばれていた二人が、自分たちの手で自分たちの物語の主役になった瞬間。


🧱 11.「飛び級のライバル横目にコツコツ」──SNS時代へのアンチテーゼ

「飛び級のライバル横目にコツコツ」

このラインは、Creepy Nutsのキャリア観を象徴している。

SNSやTikTokから一気にスターダムに駆け上がるアーティストが増えた時代。 そんな“飛び級の成功者”たちを横目に、Creepy Nutsは地道に積み上げてきた。

  • クラブでの場数
  • ワンマンライブ
  • 全国サーキット
  • ラジオのレギュラー
  • MCバトルの実績

それらすべてが、 “一夜で手に入れた人気”ではなく“積み上げた信頼”としてリスナーに返ってきた。

Creepy Nutsというユニットは、 このコツコツという言葉が似合いすぎる。

だからこそ、全ての努力が“土産話”として花開いていくのです。


🎤 12. フェスのスタッフだった日から、“トリ前”へ──物語が完成する瞬間

「お前が誘導のバイトしてたフェス 俺ら今トリ前でかましてる」

この一行は、泣かずに読めないレベルのエモさ。

かつてDJ松永が“誘導スタッフ”として働いていたフェス。 道案内をして、スタッフTシャツを着て、 出演者を見送りながら「いつか出たい」と思っていた場所。

その同じフェスの、その同じステージで、 今はトリ前というトップクラスの出番を任されている。

「土産話」という曲のテーマを最も象徴するシーンです。

人生はこんなにも出来すぎた物語を描くことがある。

そしてこの後、物語はクライマックスへ向かいます。



🎇 13. 「年末空けとくわ」──紅白歌合戦への伏線が現実になる

「ガキ使にピザ? カウントダウン紅白? まぁ今年も年末空けとくわ…」

このラスト前の一節は、「土産話」の中でも最も鳥肌が立つパートです。 一聴すると、いつものR-指定の軽口に聞こえます。

しかし実際には、ここにはとんでもなく深い意味が隠されている。

✔ 「年末空けとくわ」= 紅白のために予定を空けておく

ラストバースにも示唆されているように、これは「紅白歌合戦に出る可能性を考えて予定を空けておく」という意味です。

Creepy Nutsの二人は、まだ紅白出演が現実的ではなかった頃から、 「冗談・皮肉・夢」の中間のようなテンションで、 “もしも紅白に呼ばれたら年末のスケジュールが必要やから” というニュアンスで語ってきました。

つまりここは、“半分ネタ/半分本気”の夢語りなのです。

✔ そして 2024年──本当に紅白歌合戦に出場した

「土産話」がリリースされた時点では、紅白出演は決まっていなかった。 しかし2024年末、Creepy NutsはついにNHK紅白歌合戦への初出場を果たします。

かつて大晦日にワンルームでガキ使を観ながらピザを食べていた二人が、 今度は国民的番組のステージに立つ。

この現実が起きた瞬間、 ファンの中ではこの歌詞が一気に“伏線の回収”として語られました。

あの日の夢語りが、未来へのメッセージだったと証明されたのです。

「年末空けとくわ」は、ただの口癖なんかじゃなかった。
本当に、紅白に出るための“予告ラップ”になってしまった。

Creepy Nutsというユニットの人生には、本当に物語性がある。 そう実感させてくれるのが、このパートです。


🏁 14. まとめ──“書くことがねぇ人生”なんて、ひとつもない

「書くことがねぇ」嘆いてた人生 振り返るだけで歌になってる

曲の最後に置かれたこの一行は、「土産話」の核心です。

売れない頃の自分は、 「人生に書くほどの価値なんてない」 「ストーリーになんてならない」 と思っていた。

でも実際にはどうでしょうか?

  • 深夜のイベントで自然と相方になった時間
  • 上板橋ワンルームでの“もしも話”
  • ガラガラだったワンマンライブ
  • ショッピングモールでの即興ラップ
  • 夜行バスから眺めた深夜高速
  • スタッフとして働いていたフェスのステージに立った日
  • ダンジョンで歯車が回り始めた瞬間
  • 助演男優賞の精神を持ったまま主役になったライブ
  • そして、紅白歌合戦への初出場

そのどれもが、今は“語らずにはいられない土産話”になっている。

Creepy Nutsがこの曲で伝えるのは、 「続けてさえいれば、人生は必ず物語になる」 というシンプルで力強い真理です。

成功かどうかではない。 派手な瞬間があるかどうかではない。

泥臭さも、恥ずかしさも、失敗も、 全部あとから振り返れば“歌になる”。

だからこそこの曲は、 夢追い人のための応援歌でもあり、 全ての生活者の人生賛歌でもある。

聴くたびに、 「自分の人生にも土産話はある」と思わせてくれる。

そんな、Creepy Nutsの核を成すような名曲です。


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📝 引用について

本記事は Creepy Nuts『土産話』(Sony Music Labels)の歌詞を参考に構成されています。
歌詞・音源の著作権はアーティストおよび関係各社に帰属します。

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