Creepy Nuts「二度寝」は、
現代社会への違和感や希望をテーマにしながらも、
そのリリックに高度な韻と比喩のテクニックが詰まった楽曲です。
ここでは、その中から特に印象的な韻のパートと、言葉選びの技術を解説します。
■ 「浦島」「玉手箱」から展開される韻と比喩
oh shit これじゃ浦島
玉手箱そっと蓋した
立ち昇る煙
全ては変わってしまってた
このパートでは、
「浦島太郎」のモチーフを使いながら
- 「浦島」
- 「玉手箱」
- 「煙」
という物語の流れをそのまま現代に転用。
さらに
oh shit 俺は浦島
煙てぇーか昔話は
では、「煙てぇ(うっとおしい)」と「煙(玉手箱)」をかけ、
懐かしさと居心地の悪さを同時に表現する韻に昇華させています。
■ 「warning」「yummy」など英単語での韻展開
warning warning 不適切な語録
カチカチ気づきゃ火がついてく
yummy yummy ここ掘れと笑う
めでたしのその先で構えてる yeah
「warning」と「yummy」という、
異なる意味・語感の英単語を2連続で繰り返す構造によって、
- 社会への警告(warning)
- 欲望や愚かさ(yummy)
という対比するテーマをポップに並列させています。
「カチカチ」「ここ掘れ」などの童話的フレーズとも自然に結びつき、
ストーリーテリングとしても強度のある展開になっています。
■ 「浦島」→「猿蟹」→「枯れ木に花咲け」まで繋ぐ物語型ライム
猿蟹はまだ憎しみ合ってる yeah
枯れ木に花咲けと願う
はじまりはじまりと急かす
このあたりでは、
童話的なキーワードを並べながら、
昔話的な韻の流れ=語呂と社会風刺が融合しています。
「猿蟹合戦」「花咲かじいさん」「はじまりはじまり」
→ これらのイメージを連続させつつ、
リズムと内容の両面から”語り”のような力強さを生んでいます。
■ 「日付変更線」「my beautiful day」などのシンガロング韻
眠れそうも無いこんな夜は
眠れそうも無い君と待ちぼうけ okay okay
my beautiful day day day
聞かせて列島state of mind
日付変更線の前
もう一歩踏み込んで all day all day
このパートでは、
シリアスな空気を少し緩和するようなサビ調のフレーズが登場。
「day」「okay」「all day」と響きが軽くて覚えやすい韻でまとめられ、
メッセージ性と中毒性の両立に成功しています。
🔍 まとめ|「二度寝」は言葉の”継ぎ目”がない
Creepy Nutsの「二度寝」は、
- 昔話
- 現代語
- 英語
- 比喩
- スラング
あらゆる言語要素が滑らかに混ざり合いながら韻を刻んでいる楽曲です。
特定のスキルとしての「踏む韻」ではなく、
言葉そのものがストーリーの流れと完全に一致しているのが最大の魅力です。
「二度寝」という一見ゆるいタイトルに反して、
リリックは切実で鋭く、そして丁寧に構築されています。
📝 引用
※本記事はCreepy Nuts「二度寝」(Sony Music Labels, 2024年)の歌詞を参考に、ライミング構造の解説を目的として執筆しています。著作権はアーティストおよび関係各社に帰属します。
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